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ゴリホフ作曲オペラ「アイナダマール」

第283回

2014年7月9日

今秋11月15,16日と東京の日生劇場でオスバルド・ゴリホフ作曲オペラ「アイナダマール」が上演されます。これまでも日本での上演が予告されたことはありましたが結局実現には至らず、今回が日本初演と言っていいでしょう。

作曲者のオスバルド・ゴリホフは1960年生まれですから、その作品は当然「現代オペラ」ということになります。ただでさえ毛嫌いされる現代音楽で、更に長大で複雑なオペラとなれば、多くの方は「御免被りたい」というのが通常予想される話です。

コスト面だけとっても大変で浮世離れしたオペラは、交響曲やオーケストラより先に「オペラは死んだ」と観光記念物としてわずかに残る程度か、とも思われましたが、どういうわけか20世紀以降の作品でも意外にあちこちで上演されたりロングランになったりする作品もでてきて、少なくとも交響曲よりはアクティブに創作され、それが一般にも一部愛好されるという、生きた状態になっているのではないでしょうか。

日生劇場は、常にオペラをやっている劇場ではありませんが、その現代に生きているオペラに着目する制作をよくやっています。先年の劇場50周年記念でもアリベルト・ライマンの連続上演をやったりしていました。今回のゴリホフ作品もライマンと同じく「世界各地で多数上演されて好評だが、日本ではあまり知られていない」シリーズとでも言えましょうか。

ゴリホフはアルゼンチン出身ですが、基本的にはアメリカで活動し、シカゴ交響楽団やロスアンゼルス・フィルそれからタン・ドゥンやグバイドゥーリナとともにバッハがらみの音楽祭で委嘱されるなど、メジャーな活動を展開しています。グラミー賞もとっているのですから、少なくともマイナーとはいえません。

そのゴリホフの代表作とも言えるのが詩人ロルカの生涯に光をあてたオペラ「アイナダマール」です。もう当然日本でもやられていていい作品ですが、今回ようやく実現の運びとなりました。

日生劇場がてがけると、その準備の丁寧さは際立ちます。事前トークイベントなどが、あの手この手で開かれて、その気になれば無料で随分勉強することもできます。

その姿勢は一貫している同劇場ですが、今回はまた一段とそうで、プレトークどころかプレコンサートが開かれました。それはテーマが連なるスペイン系の歌、踊り、器楽、朗読を芝居仕立てで、そのための演出もされているのです。
http://www.nissaytheatre.or.jp/nissay_opera/news/2014/06/news-1023.html

このコンサート自体がメインの終着点として企画されてもおかしくないような多様、豪華な内容でした。

そして、そのコンサートが終わったら更にそのままステージに作曲者のゴリホフが登場してアフタートーク、という「これでもか」という突っ込み方です。

作曲者もここまでやってもらえば、文句はないでしょう。ただ、せっかくゴリホフが登場してたっぷり話をきけるのかと思ったら、私のうかがった二日目では司会進行の福中冬子先生(東京芸大准教授)のご高説が多くの時間を占め、その後にちょっとだけ質問、という具合に感じました。

その他諸々の関連イベント情報は日生劇場の公式サイトを御覧ください。
http://www.nissaytheatre.or.jp/news/

チケットを売るためにプレイベントはまだ分かるとして、ライマンの時は事後のイベントまで企画されていました。もちろん本番が頂点ではありますが、これらのトータルな体験でその作品が身につけば、誰よりもその身につけた方は生涯深くそれを楽しめて結局オトクということになるでしょう。

極端な話、本番に行けない方でも、サイトやイベント類に丁寧に接すれば、漫然と本番だけ見るより味わいは深いかもしれません。まあ、それは言い過ぎとしても、世界各地では100回以上上演されている本作品に何らかの形で少しでも接していただくのはいかがでしょう、とは言いたくなります。
(平井洋)