特集Scene

日本センチュリー交響楽団コミュニティプログラムディレクターに野村誠氏

第277回

野村誠(作曲家)

2014年4月16日

大阪のプロオーケストラである日本センチュリー交響楽団が、この春から新しいコミュニティプログラムを始めています。題して~社会とオーケストラの新しいつながり~。<<「音楽による人の繋がり」と「社会におけるオーケストラの新しい価値」を創造すべく、一般の方を対象にした創造的でインタラクティブな芸術プログラム(以下「コミュニティプログラム」)を展開します >>(同オーケストラプレスリリースより)、という趣旨のようです。

オーケストラがワークショップやら地域社会への参加活動をする試みは、日常茶飯事で行われていますが、それはほとんどが啓蒙的な、クラシック作品や楽器を普及する目的だったりして、オーケストラの新たな存在意義まで創りだそうというほどラディカルなものは、そうは無いように見えます。

今回の日本センチュリー交響楽団のケースが注目されるのはコミュニティプログラムディレクターというポジションを新設して、そこに作曲家の野村誠さんを据えているということです。

野村誠さんは、いわゆる「作曲家」のイメージを大きく超えるユニークな活動をこれまでずっと続けてこられました。その活動は簡単に略歴で要約できるようなものではなく、ご本人のブログ「野村誠の作曲日記」
http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/
でも、少し丁寧にたどって読んでいただいてイメージをお持ちいただくしか無いくらいでしょう。

いわゆるクラシック的な前提をほぼはずして、楽器、楽譜、プレイ、共同作業あらゆるものを新しい視点から組み立てなおして共に創っていく、といったあり方のようです。

それは普通の「オーケストラ」という組織が持つイメージとは、ほとんど対極にある活動で、担当者や事務局の対応一つとっても順風無事にいくとは考えられませんが、だからこそその取組は注目に値するものと思われます。

詳しくは同オーケストラのプレスリリース
http://www.century-orchestra.jp/topics/pdf/20140319_the_work_press.pdf
や、その野村誠さんブログのなかの該当記事
http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/20140408
を御覧ください。

のっけから若者就労就業支援施設・ハローライフ(大阪市西区・NPO 法人スマイルスタイルが企画運営)とのコラボレーション企画 music project「The Work」というのですから、そのユニークさも見当がつこうというものです。

野村さんからすれば、いつもやっていることを、より大きな組織とどう折り合わせていくか、ということになるでしょうし、オーケストラからすればこれはもう、ただただ新たなチャレンジということになります。

自治体からの助成金カットなど今日の波を受けてきた日本センチュリー交響楽団としては、単に通常の演奏会をやる場を広げたり、券売拡大を図るだけでは限界も感じているのかもしれません。「お金を援助してください」というスポンサー獲得活動ではない、より本質的な新たな存在意義の提出という王道であり茨の道でもあるところに踏み出したのは、注目に値します。(平井洋)


ー野村誠氏プロフィールー
1968年生まれ。京都大学理学部卒。作曲家として、オーケストラ、ガムラン、和楽器、ロックバンド、日用品、瓦など、様々な楽器のために作曲し、世界20カ国で作品を発表。また、お年寄りから、子どもまで、プロ/アマチュア問わず、幅広く共同作曲を実践。「取手アートプロジェクト2006」プロデューサー、日英共同の「ホエールトーン・おぺら」監修、「千住だじゃれ音楽祭」音楽監督など、国内外で数多くのコミュニティプロジェクトを成功させる。2006年度、NHK教育テレビで、子ども向け音楽番組「あいのて」番組監修し、自身も赤のあいのてさんとしてレギュラー出演。第1回アサヒビール芸術賞など受賞多数。CD、著書多数。これまでに、京都女子大、京都造形芸大、大阪音大、東京藝大、慶応大、早稲田大、ハダスフィールド大(イギリス)、インドネシア国立芸大、シラパコーン大(タイ)などで講師を務める。2014年4月、日本センチュリー交響楽団コミュニティプログラムディレクターに就任予定。