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充実している新国立劇場2013-14シーズン後期

第273回

2014年2月12日

前回の本欄では新国立劇場の2014-15シーズンのラインアップをご紹介いたしました。ですが、オペラのシーズンは、普通は9月から翌年5月または6月くらいですから、今シーズンもまだいくつかの上演が残っています。それらが、尾高監督の最後を飾るといいますか、なかなか力の入ったものが並んでいますから、順序は逆になりますが、今回はその2013-14シーズン残り分のご紹介です。

まず、2014年3月はコルンゴルドの「死の都」。これは20世紀の面白いポジションにあるオペラです。ハリウッドでも実績を残したり、ハイフェッツのために書いたヴァイオリン協奏曲が知られていたり、のコルンゴルドが若い時代に書いたもの。20世紀なのに甘く美しい旋律に満ち溢れていて、好きな方にとっては20世紀オペラの最高傑作と言いたいくらいのところでしょう。逆にかなりのオペラ好きでもコルンゴルド?死の都?知らないな-。あるいは「名前くらいはきいたことがあるけど・・・」といったくらいでドイツ系にもイタリア系にもフランス系にも属さないせいか、全く知られていない面もあるような気がします。

以前はもっとそうでしたが、作品の力でしょうか、近年は徐々に知名度も上がり、現に今年は新国立劇場以外にびわ湖でも取り上げられます。世界的にはフィンランドでミッコ・フランクでやられたプロダクションが大成功してDVDでも定評がありますが、今回は何とそのフィンランドのカスパー・ホルテン演出によるプロダクション。それに主人公がトルステン・ケールですから、大きな目玉上演と言っていいでしょう。

続いて再演もので「ヴォツェック」。水の張られた舞台がずっとピチャピチャいって話題になったりもしましたが、その舞台と作品のドラマ性は当然ながら不可分に緊密で、休憩なしの一気の緊張感を更に盛り上げているようです。

「死の都」とは逆方向のような、同じような面を持っているような、いずれにせよ20世紀を代表する両作品の饗宴ということになります。

続いてぐっと趣が変わってイタリアとドイツ後期ロマン派の典型作品。先ずイタリアは「道化師」と「カヴァレリア・ルスティカーナ」。

手垢にまみれたヴェリズモオペラのようで、陳腐になってしまうと甘いだけのホームドラマになりかねないのですが、今回は新演出。ジルベール・デフロがギリシャ古典劇につながる面を押し出しているようで、彼独特の格調高さと作品の生々しさの折り合い点が興味深いところです

後期ドイツロマン派代表はシュトラウスの「アラベッラ」。これはなんといっても尾高芸術監督の新国立劇場デビュー作品でしたから、最初と最後をこれにしたのですね。よほどの思い入れがある、と思わざるをえません。シュトラウスの中では特にポピュラーとはいえませんが、確かにその美しさは文句無し、といった感じの作品で、前任者の若杉弘さんのシュトラウス偏愛作品は不思議さが漂う「影なき女」、それに対して尾高さんが「アラベッラ」というのは実に個性が出ています。今回は指揮がウィーンのオーケストラで長くポジションを持っていたベルトラン・ド・ビリーというのも期待が膨らむポイントでしょう。


そしてシーズン最後をかざるのは邦人作品で池辺晋一郎作曲の「鹿鳴館」。これは若杉時代の最後に制作されたもので、若杉ー尾高時代のフィナーレらしい選択ということになるでしょう。指揮者飯森範親が新国立劇場初登場と、新鮮さも加えられています。

今の時期になりますと、つい2014年秋からの新シーズンに目が向いてしまいますが、今シーズンでもまだこれだけの充実したラインアップが残っています。まずはこれらを十分に味わってみてください。(平井洋)